2025年5月 山林火災に見舞われた岩手県大船渡市視察

5月連休の後半を使って、山林火災(消防法の分類では「林野火災」)に見舞われた岩手県大船渡市の現状視察に行ってきました。長年災害対策に関わってきた私ですが「山林火災」の現場を見るのは今回が初めてです。 今回の火災で亡くなられた方は一名。焼失した家屋等は220棟以上、山林延焼面積は3300ヘクタール以上に及びました。 2011年の東日本大震災でも大きな被害に遭われた大船渡市の皆様に心からお見舞いを申し上げますと共に、再起への確かな支援をお誓い致します。

以下、テキストと画像で現地の様子をお届けします。
活動ブログには、動画も掲載していますのでそちらもご覧ください。

・赤崎町。山林火災のあった大船渡市の海岸線には防潮堤が整えられています。
・三陸町綾里、「あやさと」と書いて「りょうり」と読むそうですが、山林火災で最も深刻な被害をを受けた地域の一つです。全焼したと思われる家屋跡も見られました。

大船渡市は今から14年前の東日本大震災で津波遡上高(国内最大)40.1mを記録。死者340人、行方不明者79人という大被害に見舞われました。 ・三陸町綾里(りょうり)にある三陸鉄道大船渡駅には「津波てんでんこ」の教えが石碑に刻まれています。

・今回の山林火災では火の粉が湾を越え赤崎町合足地区や三陸町綾里など広範囲に被害が及び3370haを焼失。2025年2月26日に発生が確認され、4月7日に鎮火宣言された山林火災は平成以降、日本最大規模。
・「災害は忘れた頃にやってくる」。129年前の明治三陸沖地震でも被災した大船渡市の至る所に災害の教訓が語り継がれています。

  

山林火災で一時休校に追い込まれた大船渡市立綾里小学校を訪ねました。

・正門前の川を挟んだ向かい側の山林まで火の手が迫っていたことがわかります。その後、4月1日に入学式も無事に行われ生徒たちは落ちつきを取り戻しつつあると聞いています。
・綾里川水門と防潮堤近くにあった作業場付近にも火の粉が飛び移り焼失した跡があります。
・山林火災は一面が焼き尽くされる場合だけではなく、火の粉が風に煽られ被害が点在し広範囲に及ぶことも知りました。

大船渡市で発生した大規模山林火災の現場です。短時間に延焼が拡大した要因には気象、地形、植生等の複数要因が重なりあった結果と言われます。

・山林のかなり奥まで入ってきました。長時間燃え続けた火災によって樹木が焼け爛れているのがわかります。 水利の確保が困難な過疎山間部の火災では防災ヘリによる空中消火や消化剤の使用など多様な消火技術が使われました。
・一方で復旧、復興支援も着実に進んでいます。 旧綾里中学校グランドには山林火災で住宅を被災された方の為に仮設住宅の建設が急ピッチで進められています。まもなく内装工事も完了の見込みで、5月24日から入居が始まるそうです。

鎮火後の山林火災の現場は相当に激しく燃えた場合でも、樹木が根っこから先端まで燃え尽きてしまう事は少なく、真っ黒に焼け焦げたままの樹木が残ります。鎮火後の山林は伐採して手を入れないと再生されません。

(動画のみ)

・山林火災で大きな被害を受けたと思われる高所地域。改めて、地元消防本部及び15都道県からなる緊急消防援助隊(一日当たり最大2100人規模)等の活動に心から感謝申し上げます。
・火災後の樹木の伐採が進む地域。スギは火災に弱く放置すると根から腐ってしまいます。広葉樹は自然再生することもありますが新芽は鹿に狙われます。森林再生には専門家の知識と予算と時間が必要です。
・大規模山林火災における、もう一つの大きな課題が山林の保水力の低下です。放置していると空洞が生まれ落石が増えたり、豪雨時の表土流出、川の水位上昇などを引き起こす可能性が高まるので注意しなければなりません。