2019年9月4日 科学技術・イノベーション推進特別委員会 質疑

6月4日、科学技術・イノベーション推進特別委員会の一般質疑に立ちました。

5月20日に、科学技術・イノベーション推進特別委員会として、京都大学高等研究院に視察を行い、同院の本庶佑特別教授と意見交換を行いました。本庶教授は、皆さんもご存知の通り、2018年ノーベル医学・生理学賞を受賞されており、今回の意見交換でも、日本の科学技術分野における研究力強化などについて、大変厳しくも興味深いご指摘をたくさんいただきました。

今回の委員会では、そのときの本庶教授との意見交換をもとに質問をしました。

議事速報(未定稿)があがってきましたので、それを私の事務所で語尾等整えたうえで、あくまで正式な議事録ではないことをご承知いただいたうえで、参考資料としてご一読いただければ幸いです。正式な会議録は後日公開されますので、現時点での文責は阿久津幸彦事務所となります。 

以下、議事速報(未定稿)

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○古本委員長

次に、阿久津幸彦君。 

○阿久津委員

立憲民主党の阿久津幸彦でございます。

まず初めに、5月28日閣議決定されました2019年版の科学技術白書を受けて質問させていただきます。白書には、がん、免疫療法につながったノーベル医学・生理学賞受賞の本庶佑先生などの事例を取り上げて、基礎研究の成果が社会を大きく変え得る、息の長い取組みが重要だと指摘されています。一方で、日本の科学技術を取り巻く環境は厳しいと懸念を表明。その理由として、日本の世界論文引用数ランキングの低下、博士課程の入学者数の減少傾向などを挙げ、「基礎研究を支える力が弱まっている」と分析されています。

そこで、質問させていただきます。我が国の科学技術、特に基礎研究を支える力を弱めないために、科学技術白書において何をすべきと分析されていますでしょうか。

○渡辺(そ)政府参考人

お答えいたします。令和元年版科学技術白書では、基礎研究の価値や基礎研究を支える技術などの重要性を改めて認識するために、基礎研究が社会にもたらす価値や基礎研究を支える技術などの具体的な事例、基礎研究の成果を迅速に社会展開していくための制度面、システム面の改革の状況を紹介しております。

その中で、今後の大きな方向性として、「科学技術の分野において、人類にとっての普遍的な真理や価値を問いつつ、世界のフロントランナーとして知の地平を切り拓き、その成果を社会に還元するとともに、課題先進国としての対応を世界に先がけて示していくためにはどうすべきか、国民的な議論と共通認識の醸成が求められている。」と結んでおります。

○阿久津委員

私は、今回の白書は、白書としては非常に正直で、誠実に語っているのではないか、分析されているのではないかと思っております。しかし、大臣がさきほどおっしゃっていたように、とがった人材を育成していくという観点では、本庶先生のお話を伺っていると、とがり方が半端でないと私は感じました。

そこで、2018年ノーベル医学・生理学賞受賞の本庶佑先生の指摘を受けて少し伺いたいのですが、本庶佑先生は、科学技術の発展に向けて、もっと厳しく、もっと具体的で突き抜けた提言をされています。

同僚議員がすでに指摘している部分も多いので、省きながらお話しすれば、「我が国の生命科学研究を活性化するには、基礎研究から応用研究までの連続性を図ることが必要、公的支援は企業にできないことを補強すべきで、基礎研究を中心に政府は支援すべき。」日本医療研究開発機構(AMED)については、尾身先生、古屋先生が指摘されたので省きます。

それから、「生命科学分野の若手研究者は三重苦」、これも古屋先生が丁寧にお話をされたので省きますけれども、これはかなり深刻だと私は考えております。

それから、「我が国ではアカデミアが企業を信頼しておらず、日本発のシーズが外資の製品として世に出ることになる」、これも大臣はよくお分かりで懸念されていることだと思いますが、これでは政府が基礎研究を支援しても我が国の税収につながらない事態になり得ます。

そこで、これらの本庶佑先生の御指摘も受けて、政府としては研究力強化に向けて今後どのような取組みを進めていくべきと考えるか、大臣にお尋ねしたいと思います。

○平井国務大臣

質問ありがとうございます。先月の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI/以下、CSTI)の本会議において安倍総理から指示がありまして、我が国の研究力を抜本的に強化するために、内閣府、文部科学省、経済産業省が中心となって、「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」を、今年中をめどに策定することにしました。

本パッケージについては、例えば、人材については、大学内外のポストの創出、海外大学経験をふやす仕組みの構築。資金については、民間資金受入れにふさわしい体制の確立。大学、国研の出島化。この出島という言葉がぴったりかどうかわかりませんが。環境については、研究に専念できるポストの創出、研究者の事務を原則アウトソーシングする等の検討をしていかなければならないと考えています。

これは局所的な改善措置ではなくて、総合的、抜本的なものとなるように政府全体で検討を開始して、産業界と連携して、産業界にはマインドセットを変えてもらうことも含めてこれから要請していかなければならぬ、そのように思っております。

○阿久津委員

丁寧な御答弁ありがとうございます。省庁横断的に政府全体として産業界と連携する研究力強化、若手研究者支援の総合パッケージについては、大いに期待したいと考えております。

しかし、一点だけ注意点を申し上げたいと思いますが、本庶佑先生は、政府は企業を助ける方向に動いてしまいがちだ、経団連と政府が近過ぎる、巨大企業が自己責任で倒産しても政府はサポートするなと。長らくの護送船団方式についても非常にお怒りの様子で、厚労省が企業合併を進めてこなかった結果による競争力低下を嘆いていらしたと記憶しております。ぜひ、企業の側ではなくて、研究者の側に立ってこれらを進めていただければありがたいと考えております。 

次の質問に移ります。

ノーベル賞受賞者の知見を国としてどう生かすかということですが、私は、今のところ十分に生かされていないんではないかと考えています。

実は、日本のノーベル賞受賞者は結構いるんですね。現在24名です。日本出身者となると、南部先生やイシグロさんなどを含め27名に及びます。世界国別ランキングでは、大体6位から8位ぐらい。アジアでは断トツのトップです。

ちなみに、数が多ければいいというものではありませんけれども、中国ではノーベル賞受賞者は3名、韓国は1名、インドは5名です。これだけ多くの方々がいらして、しかも、2000年以降の受賞者が16名もいらっしゃるんですね。これらの方々のいろんな思い、特に発信力とみずからの知見への自信というのは、やはりノーベル賞受賞者には卓越したものがあると思っております。

もっともっと国として生かしていけないものかということで伺います。多くのノーベル賞受賞者が連携し、その知見等を政府や企業、アカデミア、そして国民へ発信するための、ノーベル賞受賞者だけをメンバーとする提言機関設置を科学技術政策担当大臣として音頭をとってやっていただければうれしいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○平井国務大臣

先生の御指摘のとおり、ノーベル賞を受賞された研究者の方々の御意見は、大変説得力もありますし、私も勉強になりますし、大変重要だと思います。これまでCSTIの本会議において、昨年のノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶佑先生を始めとする受賞者の方々に御出席いただき、各種の御提言はいただいているところです。

CSTIにおいては研究現場のことも詳しく把握されている有識者の方々がいらっしゃることから、新たにノーベル賞受賞者だけをメンバーとする提言機関を設置するということは現在考えておりませんが、引き続きCSTIの場を活用して、ノーベル賞受賞者を始め研究者の方々の御意見を伺ってまいりたいと思います。

そして、ノーベル賞受賞者の方々には、我が国の科学技術イノベーションの一層の発展に向けて、さらなる研究活動や人材育成に大いに力を発揮していただくことを期待しているところであります。

○阿久津委員

先ほどの研究力強化プログラムにも加えていただけたらありがたいなと考えております。

最後に、「ジェンダー平等と科学技術の発展」についてお伺いします。日本のノーベル賞受賞者には残念ながら女性は一人もいません。科学技術の世界に男性も女性もないと言われてしまえばそれまでですけれども、政治の世界でも、昨年全会一致でパリテ法が成立し、女性の国会議員をふやすための努力が各党でスタートしているわけでございます。

アカデミアの世界でも、女性が長期にわたる研究を続けるには大変なハンディがあると聞いておりますし、一方で、科学技術の世界でも、女性の視点による、男性には考えつかないような新たな研究、発見、貢献が期待されているところであります。

女性の研究者にも光を当て、女性研究者にも活躍しやすい環境を整備する努力が必要だと考えておりますが、日本の女性の中からも、ノーベル賞を受賞するような世界トップ水準の研究者を育成できたらと思っております。

これは、国益から考えても、人材の宝の山はここにあると私は思いますが、最後に一言だけ大臣に伺います。科学技術分野から女性研究者へ何らかの環境整備や具体的支援等に道を開くことはできないかどうか、(時間になりましたので)一言だけ。

○平井国務大臣

女性研究者の割合は、増加はしているんですが、主要国と比較するとまだ低い水準でありまして、理工系分野における女子学生比率やその伸びも低い状況にあります。研究活動と出産、育児等との両立が困難な環境に置かれている場合があることなどから、必ずしも女性研究者が十分活躍できる状況には至っていない面もあると認識しています。

政府としましては、その環境を改善して、女性活躍推進に向けて各府省と連携して応援していきたい、そのように思います。

○阿久津委員

ぜひ改善をお願いします。終わります。ありがとうございました。

以上